新田サドベリスクールにあるルールは、ひとつひとつ 自分たちで考えて 作られてきたものです。
自も他も大切にし合いながら、ここに居るメンバーが互いに気持ちよくスクールで過ごすことができるように、新田サドベリー会議で話し合いルール化をします。
ここでは、ルールは守りましょう!と一方的に守らされるものではないので、ルールを作る過程もとても大切にされていて、またそのルールは、メンバーであれば誰でも作る・変える・なくす の提案ができます。(いつ 誰がどういった理由から 提案し、 また どんな意見が交わされ作られたのかも 議事録として残されています)
また、「ルール違反の紙」というものがあり、それが提出されると審議の場が設けられ、相談員を立てての話し合いも行われます。
先日も[ 人が嫌がることをしない・言わない ]というルールに対し、困り感を抱えていた生徒から、ルール違反の紙が出されていました。
生徒ふたり(Sちゃん・Yちゃん)・スタッフひとりが相談員となり、違反を訴えるひと(Tくん・Kくん)、訴えられたひと(Hくん)、それぞれの想いを丁寧に聞いて それぞれが納得するかたちを求めて審議していきます。
『一瞬でたたいたり、悪口を言ったり、キレるのを辞めてほしい』
そんなTくん・Kくんの思いの背景を聞きながら、たたく・悪口・キレる のは、何を表現したものなのか? その言動の奥にあるHくんが伝えたかったことは? を、次はHくんに聞いていきます。
「注意されて(腹が立ったことを)我慢しているのに、注意した人に、(その我慢している態度に対して)いやな顔をされるからイヤ」「悪口は言ってない」と いうのがHくんの気持ち。
悪口は、言ってる⇄言ってない の応酬になってきたため、それぞれの言い分に行き違いがあるということで、まずは みんなで『悪口』について 紐解いていくことになりました。
TくんKくんにとっては、『死ねや』『殺すぞ』という言葉が悪口。
その意見を聞いて、「死ねとか オレ言ってないし…」と、訴えるHくん。
「わたしも死ねって言葉は何回も聞いたことがあるから、Hくんはもしかしたら無意識で死ねって言葉を言ってしまってるじゃないかな」と、相談員Yちゃん。
「(注意されて)我慢しようとしているのかもしれないけど、そのセリフを言うときの態度も、にらんだり こぶしをにぎりしめていて、その態度も周りに恐怖心を与えてるんだよ」とKくん。
審議は30分以上続き、途中 想いが上手く伝わらず イライラとするHくんでしたが、そのHくんの気持ちを 丁寧に汲み取ろう、話し合っていこう という空気が みんなにはあって、次第に Hくんは「なるほど…」と 自分の言動を振り返っていきました。
そして話は[ ただやめさせる=Hくんだけに我慢させる、というのではなくて、Hくんが感情を抑え込むこともなく 誰も怖がらず イヤな気持ちもしないように、Hくんのの気持ちを発散できたり 伝わるようにできたら いいよね ]という流れになっていきます。
【だれも傷付かず、だれも傷付けずにできる方法】を考えよう
屋外に気分転換をはかりに出る・クレヨンしんちゃんのねねちゃんのママみたいにぬいぐるみをなぐる… と、いろいろな意見も出たなか、「たたく・悪口・キレるの原因と よくなっているSwitchの使い方についてルールを決めたらいいんじゃないか?」という案が出たところに 全員の同意が 集まりました。
使用ルールの決め方は、HくんTくんKくんの意見から[使いたい人の意見を取り入れてもらって Switchの持ち主に決めてもらう]となり、それならばと 双方が納得。
それが、審議結果となりました。
今回は個人間のルールでしたが、こんな風に 新田サドベリースクールでは、席についているメンバーの どの子のどの意見も 大切にし合いながら、 (時に言葉になりきらず 行動に出た想いも言語化して) 話し合いを進めていきます。
今回のルール違反の審議の場で、わたしの心がぐっとつかまれたのはYちゃんの〖Hくんも傷付かず、他の子も傷付けずにできる方法〗という言葉。
個人的にはとてもタイムリーだったで、本当にはっとさせられました。
早速、その回の相談員でもあり Switchの持ち主でもあるYちゃんが、HくんKnくんTくんに聞き取りをしてルールができました。それに必要な予約表は、スタッフのわたしにヘルプの声がかかり、CちゃんSちゃんの手を借りて Yちゃんが作成しました。
それからの今。
「そういうこと言うと ケンカになるから、やめてほしいの」
「ルール作ったんやろ?自分たちで考えて作ったんなら、ちゃんと守りよ」
「言い方、気をつけてよ」
こじれそうになる手前で 声を掛け合っている姿に、たかがルール されどルール。自分たちで問題の原因を見つけて 解決方法を創り出すという経験で、 こんな風に場が変わっていくんだな…と 感じる出来事でした。
文・松本雅子