カフェをやりたい

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「カフェをやりたい。」と生徒の一人が提案したのは、5月のことでした。所属するガールスカウトの活動で、福祉施設で「喫茶」という活動をしたので、同じことをサドベリースクールでもやってみたいとのことでした。

バージョン 2

彼女が体験した「喫茶」とは、福祉施設に住む高齢者や障がい者の方々のためにお茶とお菓子をスカウトが用意して、本当に注文をとってお金をいただくものだったそうで、その説明を聞いた女子数名が、即座に賛同して生徒7名からなるカフェチームが誕生しました。

第1回目の営業は、お試しの意味もありスクール内での茶話会にて生徒と保護者のみを対象に行われました。ひと月前からメニューを考え、注文のシステムを考え、買い出しをし、クッキーやブラウニーなどのお菓子を手作りし、本番はなんと1万円を超える売り上げを達成‼これに自信をつけたメンバーは、新田サドベリースクールと同じ地区内にある、現在は休業状態にある「人形浄瑠璃の館」の店舗をお借りして営業できないかと考えました。

スタッフを介して地区の長老にお願いをしたところ、「まあ一度話をしに来なさい。」と言っていただき、メンバー全員で人形浄瑠璃の館にお邪魔しました。

長老「さあ、何をしたいんだったかな?」

ンバー「あの、喫茶をしたいんですけど…。」と、緊張してしどろもどろになりながらも、希望の日程や営業内容を一生懸命説明。

長老「まあ、やりたいことはわかった。ただ、ここの建物をお貸しするのに、ただ(無料)っちゅう訳にはいかんしなあ。」

一同、一斉に顔を上げ、不安そうな表情。

メンバー「え、いくら払ったら、貸してもらえますか?」

長老「そうだなあ。あんまり高くては、あなたがたのお店が失敗してしまうしなあ。難しいところだなあ。」

長老、しばし悩む様子。

長老「それじゃあ、300円ほどいただこうか。それで一回、やってみんさい。一日働きっぷりを見せてもらって、その先のことはまた考えよう。」

メンバー「ありがとうございます‼」

というわけで、第1回目の営業日がやってきました。

メンバーは慣れたもので、今回はほとんどスタッフも手助けを求められることはありませんでした。

チラシを作り、コピーし、地区内の1件1件に手配り。

「こんにちはー‼新田サドベリースクールですけど、来週の水曜日にカフェをするので、良かったら来てください。」

と、誰に指示されるわけでもなく大きな声を出しながら一軒一軒回っていました。新田集落の皆さんもあたたかく受け止めてくださり、「天気がいいといいなぁ。」「がんばって。」などと声をかけてくださいました。

クッキー作りも、「あ、さとちゃんは買い出しの運転に行っていいよー。」というので気になりながらも出かけると、約1時間後にはすっかり焼くだけの状態に仕上がっていました。

そして迎えた営業当日。

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1時間前から「準備中」の暖簾をかけて準備開始。この場所は、新田サドベリースクールから歩いて5分ほどのところにあるのです。

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メンバーで頭を寄せ合って、作業分担を確認。

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お皿や材料を整理して、お客様を待ち焦がれ…

ようやく最初のお客様が来ました‼︎ 最初のお客様は、新田サドベリースクールの生徒でした。

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お客様が帰ったら、食器洗いもしなくてはなりません。最年少の6歳のメンバーは、蛇口に手が届かず何度も仲間に助けを求めながら頑張っていました。

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この日は最高のお天気‼︎ テラス席(!?)にもコーヒーを運びます。

 

 

 

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お会計もしっかり。この日は智頭の美味しいパン屋さん、「夢屋」さんがパンを委託してくださり、お客様に飲み物と一緒にパンを召し上がっていただくこともできました。

 

 

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この日、メンバーは3時間の営業で約7000円弱を売り上げました。

わたし(さとちゃん)はスタッフとして、またカフェメンバーの一員としてずっと活動に関わらせてもらっていますが、この活動を通してまた、「生徒の力を信じて任せる」ことの重要性を感じています。

メンバーの中で一番長く生きて来た友人として、あまりに「これは心配。」だと感じる時には、「私は○○という理由で、みんなの○○という状況を心配をしているよ。」という伝え方をすることはありますが、伝えた後は「じゃ、みんなが決めた結論を尊重するから、結論が出たら呼んでね。」といって、なるべくその場を離れるようにしています。これがうまくいくこともあれば、いかないこともありますが、大抵の場合生徒同士でしっかり煮詰めて自分たちの力で少しずつ課題を解決しながら進んでいきます。

「信じてるよ。」「任せたよ。」「楽しみにしてるよ。」

この言葉を、カフェのメンバーは春から何度もかけてもらって来ました。

施設を貸してくださった地域の皆さんから。新田サドベリースクールをいつも見守ってくれている、地域の皆さんから。同じサドベリースクールの生徒から。保護者の皆さんから。

人というものは、やはり誰かの期待に応えたいと思うものなのではないでしょうか。恐怖や不安によるコントロールをしなくても、本来人に備わっている「よくありたい」という素質を伸ばす場所。そんな場所や関わりが、社会にたくさん増えて行ったらいいなと思っています。