新田サドベリースクールに見学や体験に来る人、もしくは外部の人で「あそこはゲームもインターネットもあるからな。」と訝しむ人は多いです。
現状新田サドベリースクールは全館Wifi環境が整っており、建物のどこからでもインターネットにアクセス出来るようになっていますし、自身のスマホやiPadやswitchなどを持参してはゲームする姿も見られます。
そんな活動も許容されている場ですが、もちろんそれだけをしに来るところではなく、それ以外の活動も同じように行う事が許容されている場でもあります。
ここに通う児童生徒も、親からのもしくは周りの大人からの「インターネットは・・・ゲームは・・・」という訝しまれる視線を感じながら、ここでそれらのデバイスや時間と折り合いをつけているのだと思います。
これらに関する意見は様々ですが、現段階ではそれらを警戒したり、子どもから遠ざけようとする風潮の方が強いように感じています。
それはきっと僕たち大人だけでなく、そんな大人が周りに多くいる子どもにも多かれ少なかれ感じているところじゃないでしょうか。
現に、ここに通う子ども達の中にも、「〇曜日はゲームや画面はなしという風に決めている。」と言って自分のスクールでの活動をデザインしている子もいれば、「家ではスマホは触らないようにしている。」と機器との折り合いを自分でつけている子もいます。
でも、「友達がしているとどうしても自分もしてしまう。」という子や、「メディアが無かったら他の遊びも出来るのに。」と感じている子もいます。
過去、新田サドベリースクールでもこの「ゲーム」に関する話し合いの場も何回も持たれました。
今回もHちゃんが「ついつい自分もしてしまうのだけれど、スクールで週に何日かメディアの無い日を作りたい。メディアが無いことによって他の活動が出来るようになるから。」と言った提案をしました。
提案がなされてから、実際に話し合うまでにスクールの掲示板にその提案が張り出される訳ですが、他の生徒(ゲーム大好きな子とか)はどういう風にこの提案を受け取るのだろうと、僕はその話し合いの日が来るのを密かにとても楽しみにしていました。
生徒からの提案というのは自分たちのスクールを自分たちのものとして捉えている感じ強くて、「自治」をすごく感じます。実際に話し合いも自分事なので活気がありますし、そこで決まったことに関してはみんなで守って行動していくという態度がハッキリとあります。
先週の木曜日にその話し合いの1回目が行われ、月曜日に2回目の場が持たれましたが、参加生徒5名のうち(話し合いへの参加は任意になっています。内容は事前に、そして直前に知らされています。)毎日ゲームを楽しく一生懸命取り組んでいるYちゃんもHちゃんの意見に耳を傾け、「週に2日となるとちょっと厳しいけれど、1日だったら良いと思う。」というような妥協点を提示したりと割とスムーズに「毎週木曜日は、業務・連絡を除くメディアの使用は無しとする。」というルールが出来ました。
月曜日にそのルールが新しく出来たことを、スクールメンバー全員集合して報告し(その日休みだった子には翌日報告し)、昨日その木曜日を迎えました。
ちょうど昨日は多くの子が待ち望んだ積雪がありました。
登校してすぐいつもと同じように「KちゃんDS貸して」と声かけるTくんに対して「今日はメディアなしの日だよ。」と教えているKちゃんの姿があったり
「今日はメディア無しの日だから家にiPadとスマホとDSを置いてきた。」と言いながら百人一首などを家から持ってくるIちゃんの姿があったりと
子ども達の中でもその日をどう過ごすか新鮮な空気が流れているように感じました。
・自分たちで提案したことが実際にスクールを変えることが出来る。とても強い影響力を実は1人ひとりが持っている。
・話し合いの場に参加しないと(参加は任意で、不参加の場合は出席者に委任するということになっている。)自分の意にそぐわないことも決定される可能性がある。
・全員が知っておくべきことが決定した時は、全員集合して報告の場があるが、その報告をしっかり聞いていないと困ることがある。
などなど、色々な気付きが生徒の中であった1日だったと思います。
自由と自治
自分たちの活動やスクールには自分たちで責任を持つということ。
自分たちが毎日過ごす環境は自分たちで作っていくことが出来るということ。
そんな事をこの日感じた子はいたはずです。
お昼から登校したHくん。
Hくんもそのようなことが決まったことを、忘れていたのか、あまり気に留めていなかったのか、登校してすぐ携帯を取り出してゲームを始めましたが、周りの子に「今日はゲームはナシの日だよ。」と伝えられていました。
「えー嫌だ。」とか
「みんなで決めたことなんだから守らないとダメだよ。」とゲームが好きなYちゃんがたしなめていたり。
「嫌だったらきちんと話し合いの場に行って意見を伝えなくちゃ。」とYちゃんに伝えられていたり。
「俺目立つこととか嫌なんだよな。」と話し合いの場に行くことに抵抗感を感じることをHくんが表明していたり。
確かに色々な子がいて、上手に自分の思っている事を言葉にまだ出来ない子だったり、人前で話すのが苦手な子だったり、そんな中でどう過ごしていくのか、そんな中でどうスクールを作っていくのか、色々な子と協働しながら考え、行動していく難しさと面白みがそこにはあるように強く感じました。
日中、「ねー洋ちゃん何して良いか分からないよ。」と困った顔して話しかけてくるTくんがいたり。
ここの場で多くの時間をメディア(ゲーム)でとられていた子たちは、その空いた余白をどうデザインするのか、そんな新たな思考回路が作られたような気がしています。
今後、生徒たちが、昨日の時間をどう感じ、どうリアクションしていくのか、大人の手を離れて、生徒たちで、考え行動し、実践していく姿を見守るのは至高の楽しみです。
本当に貴重な、有意義な、楽しい時間だったように僕は感じましたが、子ども達はどう感じたのでしょうね。
1人ひとり、明日からもまた楽しみです。
メディアじゃないことに時間が使われたのでとてもクリエイティブな時間(今までにはあまりなかった時間の流れ)がそこにはありました。
まだこの感じを上手く捉えて表現し難いですが、ちょっとずつしていけたら良いなと思います。
生徒たちの自由と自治
社会は自分たちで作るんだと、社会に対して主体的なマインドを培う事。
そんな事が強く意識出来るようなそんな出来事をみんなと共有できた1日だったと思います。
また今日からも楽しみながらやっていきます。
文:スタッフ 長谷洋介