来年度のスタッフ体制について

b35ad253-fb0a-45c0-b855-fc2e65cda8b3
LINEで送る

サドベリースクールの素晴らしいところは、自立した個人が、スクールが、経験を経て、その経験をもとにより良くありたいと考え、向上の為の道を歩んでいくその力強い姿にあるのだと思う。

短絡的にみると、選択したことがもしかしたらネガティブな方向に進むことも勿論ある。

それはチャレンジする過程では不可避な事で、その経験も踏まえて力強く歩む意思がそこにあるかどうかが重要なんだと感じる。

映画「屋根の上に吹く風は」が公開されたのは1年前で、その映像は2018年度のものだ。

今でもたくさんの場所で上映されては、鑑賞した人の心に色々なものを語りかけるそんな作品であると思う。中でも大きな反響をいただくのは「選挙」の描写だ。

別名「デモクラティックスクール(民主主義の学校)」とも呼ばれるサドベリースクールだが、僕たちも例に漏れず、アメリカのサドベリーバレースクールをモデルにしながら、日本で行われている選挙を参考にしながら、次年度のスタッフについても「民主的に」選挙で選ぶということを行ってきた。映画に出てくるのは2018年当時(開校して4年目)の描写だ。

映画を観ていない人もいるだろうが、良く聞く反応としては

「そこまでシビアに選挙しなくても良いのではないか。」

「子どもにそこまでさせる意味があるのか。子どもにそこまでの判断をさせなくても良いのではないか。」

「スタッフの雇用がもっと安定したものであってほしい!」

といったものだ。

「民主主義」とはなんだろうか?

苫野一徳さん(熊本大学准教授 教育者・哲学者)によると

【その最も重要なキーワードは、私の考えでは次の二つ。「自由の相互承認」と「一般意志」だ。
 人類はこれまで、互いの「自由」を主張することで命を奪い合ってきた。この泥沼から抜け出すためにはまず、私たちは互いが対等に自由な存在であることを認め合うほかにない(自由の相互承認)。その上で、一部の権力者の意志によってではなく、全ての人の利益になる合意(一般意志)を見いだしながら、社会を運営していくしかないのだ。】
ということで、これについては僕もサドベリーのスタッフをする上でとても気を付けている。
日本の社会に生き、暮らし、幾度となく選挙にも出かけていって投票を繰り返してきたが、選挙を通じて僕の意思が選挙に反映されるような手ごたえは残念ながら希薄だ。
それはきっと僕だけでなく、一定数の国民は似たような感覚であるのではないだろうか?
新田サドベリースクールも関わるスタッフについて考えるときに「選挙」という手段をとってきたが、それを行う度に試行錯誤を繰り返してきた。
年によっては1票差で自分の大好きなスタッフがスクールを去ることになって、それによって数人の生徒がスクールを去るということも経験した。
「誰の何の為の選挙なのか?」
都度都度、本質に立ち返るようにみんなで努力しながら、話し合いながら、形を模索する。
「スクールにスタッフとして関わりたいと意欲を持って手を挙げてくれている人たちにどうスクールと関わってもらうのか?」
「可能ならばそういう人たち全員にスクールにスタッフとして関わって欲しいと願うが、予算的な制約もあって、スクールから給与として支払えるお金には制限がある。」
そんな制限を感じながら、スタッフの雇用について考えてきた。
近年はスクールに関わってくれる関係人口を増やしながら、「インターンシップ」や「サポーター」などの制度も作りながら、少しでも多くの人にスクールに関わってもらえるような試行錯誤もしてきた。
スタッフに関しては、随時募集しながらその関わり方について模索してきた。
2020年度からはその年度に関わってくれているスタッフに来年度の意向を聞いて、希望が叶う様に調整したり、スタッフが不足しそうだということだったら、積極的に広報してスタッフとして関わってくれる大人を募集した。
関わりたいと思ってくれる大人みんなに関わって欲しいというのがメンバーの共通の意思(一般意思)だからだ。
目指すことはただ1つで、より良いスクールになる為にはどうしたら良いか?
だったと思う。
今年は今年度で僕がスクールを離れることになったので、スタッフ募集の広報を例年に比べても積極的に行い、スタッフ候補者含め、現役のスタッフに来年度の意向を聞いて、11月末を持って、その回答(来年度もスタッフをしてくれるか?してくれるとしたら週に最低何日、最高何日を希望するか?)が出そろった。
そして本日12月1日、出席生徒全員が集まってその回答についてみんなで目を通したり、その日スタッフとして入っていたダニエルさんには直接その思いを聞いた。(回答が英語だったのもあって。)
b620d8ed-c273-48ce-ac4c-de6527dc1258
その後に、出席生徒でどのように来年度のスタッフについて考えたら良いかの話し合いの場があった。
「〇〇さんに5日来て欲しい。」「〇〇さんが良い。」などなど、それぞれの思いをグルっと聞きあう。
僕は記録係に任命され、生徒たちが話し合っているのを記録しながら聞いていた。
Tくんがみんなの話をリードしながら話し合いが進む。
話し合いの過程でどうしたらよりみんなの気持ちが反映される話し合いになるのかと、スタッフに立候補してくれているスタッフの名前と、希望日数を表にしてそれぞれがその表に、来年度のスタッフに誰にどのように入って欲しいかの希望を書き込んでもらうようにすることになった。
b35ad253-fb0a-45c0-b855-fc2e65cda8b3
 一日に現場に入るスタッフが2人と想定して、10個の枠が埋まるようにそれぞれの希望を書き込んでいく。1人で書く子もいれば友達数人で相談しながら書く子もいた。
それぞれが活発にその紙に向き合っている様に見えた。
今は全員が記入した紙をみんなで共有し、どのように配分したらいいのかを合意に向けて話し合っている。
子どもたちの気持ち、立候補してくれているスタッフの気持ち、それぞれの気持ちを最大限組みながら合意の道を探っている。
小さな規模だから出来る事かもしれないが、「スタッフ雇用(選挙)」の事柄1つとってみても、試行錯誤しながらも力強く前に進んでいる様を目の当たりにしている。
納得感を持って日々過ごすことは、納得感を持って自分の人生を歩むことに繋がっていくのかもしれない。
どう着地していくのだろう。
見守っていきたい。
文:スタッフ 長谷洋介